これまで、いくつかの禅語を紹介してきましたが、共通するキーワードは「人とのつながり」でした。
日本人らしい「人とのつながり」とはどのようなことなのでしょうか?
日本人は昔からグループで働くのが好きで、得意な民族です。
仲間意識をしっかりと持ち、互いの欠点を補い、一人が失敗しても、まわりの皆がそれをカバーする。そういうつながりの中で生きてきました。
禅の言葉の著者「枡野俊明氏」は、日本の“競争”についての考え方の変化に問題があると解析しています。
お互いを高め合う競争から、相手を引きずり落とすといった“生き残り”を掛けた競争へと変化し、その結果として「人格否定」にもつながった。
このような環境で、競争ほ図ると「人間不信」で「心のやり場を失い」、結果として「鬱病」や「自らの命を絶つ」人が増えていきます。
もとを正せば、アメリカ型個人主義によるものと著者は続けています。
アメリカは多民族社会。様々な文化が入り交じっているので、プロセスよりも結果を重視する傾向があり、その価値観も根付いているといえる。
逆に、そのような文化で生き抜くアメリカ人を見ていると、「彼らは負けることに強い」といえる。
個々それぞれに勝負をして勝ったり負けたりする。
当然勝つ時もあれば、負ける時もある。
常にそのような環境にあれば、負けたとしても「今度勝てばいい」と思うことができる。
しかし、日本人は、一度負けると途端にシュンとなってしまい、「もう自分は終わり」だと思ってしまう。
会社同士の勝負に負けてもさほどショックではないが、個人の勝負に負けると立ち直れなくなる。
このように考えると、これからの「人とのつながり」の在り方は、益々変化し続けるものと感じます。
同じ地域でのつながりから、同じ価値観や嗜好といったもので共有できる「場」が必要なのでしょう。
SNSの発展により、地域と地域の距離も縮まり、昔のようなつながりに縛られない新しい「場」を求めた関係構築が加速する時代へと変化してきました。
しかし、それは与えられるものではなく、お互いの努力によって生み出されていくものなのだろうと思います。
禅語の読み解きながら、現代の我々の人とのつながりかたを振り返ることができました。
次回からの禅語の共通キーワードは「働くことについて」です。
「働くとは」について、禅語を通じて考えてみたいと思います。